妻の妊娠が分かり、様々な情報収集をする中で、出生前診断なるものがあると知りました。
やるべきかどうか真剣に迷いましたが、我が家ではやらないことに決めました。
メリット・デメリット、かかる費用やその特徴を踏まえて、今迷っている方の一助になればと思います。
出生前診断とは
妊娠中に胎児の状態を調べる検査のことで、主に染色体異常(ダウン症等)の可能性の有無が分かります。
妊娠10~20週の間に検査を受けることが一般的なようです。
妊娠が発覚するのが7~8週目と考えると、実は検討する期間はそこまで潤沢ではないです。
ちなみに、「出生」は一般的には「しゅっしょう」と読むのが正確ですが、医学用語では「しゅっせい」が多いようです。
面白い記事を見つけたので共有します。
専門家のやり取りの中で、「しゅっしょう」か「しゅっせい」か、どちらでもよいという結論になっています。
ameblo.jp
主な検査方法
エコー | NIPT | 母体血清 | 羊水 | 柔毛 | |
---|---|---|---|---|---|
方法 | 腹部に機械を当てる | 採血 | 採血 | 腹部に針を刺す | 腹部に針を刺す |
安全性 | 安全 | 安全 | 安全 | 流産リスク有 | 流産リスク有 |
費用(万円) | 1~5 | 20 | 2~3 | 10~20 | 10~20 |
診断の確定 | 非確定 | 非確定 | 非確定 | 確定 | 確定 |
出生前診断についてキチンと知っていますか?~検査を受ける前に理解を深めるサポートブック~を基に作成
非確定的検査
超音波検査(エコー検査)
通常の妊婦検診でも行われるエコー検査も、一種の出生前診断とされています。
ここで示したのは、胎児の内臓の様子をより詳しく診るための胎児精密超音波検査のことです。
母体の腹部に機械を当てて、画像を見ながら診断する方法なので、流産リスクはありません。
一方で、胎児の染色体異常については可能性しか分からず、診断を確定することはできません。
新型出生前診断(NIPT)
母体から採血し、胎児の染色体を調べる方法です。
NIPTでは一部の染色体の様子を調べることができますが、そのカバー範囲は染色体異常症全体の2/3程度と言われています。
ただし、欠点として妊婦の年齢によって陽性的中率が50~90%とばらつきがあることが挙げられますので、NIPTだけでは、診断を確定することはできません。
なお、陰性的中率は99%とかなり信憑性は高いです。
陽性的中率とは、「陽性と診断され、実際に異常がある」という場合で、妊婦が高齢になるほど的中率が高いとされています。
したがって若い妊婦であるほど、偽陽性(本当は陰性なのに陽性と判定されること)の可能性が高くなります。
検査方法は採血だけなので、流産リスクはありません。
母体血清マーカー検査(トリプルマーカー、クアトロテスト)
NIPTと同様に母体から採血して、胎児の染色体を調べる方法で、流産リスクはありませんが、診断を確定することはできません。
結果が確率で表示されることが特徴で、その解釈が難しいとされています。
例えば、「胎児がダウン症である確率が2%です。なお、あなたの年齢の平均値は1.5%です。」と言われても困りますよね。
確定的検査
羊水検査
母体の腹部に針を刺し、羊水内の胎児の細胞を採取して検査する方法です。
あらゆる染色体異常について、診断を確定することができますが、流産リスクが約0.3%あります。
確定的検査と非確定的検査
確定的検査は、診断を確定できるが、流産リスクがある。
非確定的検査は、流産リスクはないが、診断を確定できない。
この2点がそれぞれの大きな特徴といえます。
また、傾向として確定的検査の方が費用が高いことも特筆すべき事項です。
出生前診断をすることのメリット
産まれる前に状態を把握することができる
これから産まれてくる赤ちゃんにまず期待することは、「元気な姿で会いたい!」ということではないかと思います。
親としては当然、子に障害がないことを望むと思いますので、産まれる前に染色体の異常がないことが分かれば一定の安心を得ることができます。
また、染色体異常があることが事前に分かれば、本やインターネットで情報を得て、産まれてくる子の個性に合わせて備えることもできます。
出生前診断をすることのデメリット
診断結果が陽性の場合に取るべき行動が決められない
私たちが出生前診断をしないことを決断した決め手の理由です。
陰性であれば問題ありません。
陽性と分かったときにどうするのか、ということです。
染色体異常があると、天寿を全うすることができない可能性が高いので、産まれてくることが子供にとって幸せじゃないかもしれない、それでも私たちのもとにやってきてくれた命を迎えたい、という気持ちがあり結論がでませんでした。
どうしたいのかを予め決めておかないと、いざという時に慌ててしまってそれが赤ちゃんにとって不幸だと思うので、方針を決められなかった我が家は出生前診断しないことに決めました。
出生前診断を受けるならば陽性だった場合にどうするのか、家族とよく話し合って方針を決めておきましょう。
仮に産まない選択をした場合にも、命を諦めることに対する精神的負担がありますし、手術することは母体にも負担がかかりますし、次の妊娠が困難になる可能性もあります。
流産等の危険性がある
繰り返し恐縮ですが、確定的診断には流産リスクがあります。
元気に産まれてくるはずだった命が、1%の確率で失われる場合があります。
1%が高いか低いかの感じ方は人それぞれだと思いますが、私は避けるべきリスクだと判断しました。
さいごに
本記事は兵庫医科大学の片田千尋先生が中心になって作成された「出生前診断についてキチンと知っていますか?~検査を受ける前に理解を深めるサポートブック~」を参考にしながら作成しました。
とても分かりやすく、倫理的な面からも大事なことがたくさん記されています。
特に、大事と思う箇所を引用します。
Ⅴ.出生前診断に関する倫理的問題
出生前診断の主な目的は、「出生前に胎児の状態や疾患を調べることで、最適な分娩方法や療育環境を検討すること」と前述しました。しかし、実際は赤ちゃんを出産するかどうか決めるために受ける人が多いのが事実です。
日本の法律では、胎児の先天性疾患(障害)を理由とした人工妊娠中絶は認められておらず、「経済的事由」や「母体の健康への害」を理由に人工妊娠中絶が行われています。そのため、出生前診断を受けた後、人工妊娠中絶を希望しても応じない医療機関も多くあります。その結果、妊婦健診を受けていた医療機関とは違う機関で人工妊娠中絶を行い、その後の心身のサポートが受けられなかった方も多くいます。したがって、出生前診断は、現在、多くの問題を抱えているのです。
本来は、出生前診断は「陽性だったから今回は諦めよう」と判断するためのツールでは決してない、ということです。
各家庭の事情や心情に合わせて、幸せな生活が送れるようにご判断くださいね。